漆・漆芸材料専門店 渡邉商店漆の豆知識

漆とは

漆を使う方には、漆は生き物だと思って扱っていただきたいです。
生育した山、育った環境、漆を掻いた時期、漆を掻いた人、精製した人などによって個性が生まれます。 その個性は、香り、粘度、乾き、しまり、艶、透明度などに表れてきます。

漆は、漆の木に傷を付け、出てくる樹液です。傷ついた幹を守るために出てきます。 ですから漆は、傷口が菌やカビに侵されやすい高温多湿の時に早く乾きます。

漆の乾く条件は一般的に、温度20-25℃、湿度70-80%が最も良いと言われています。 確かに上記の条件は早く乾く条件でありますが、絶対条件ではありません。 上記条件に近づくほど、早く乾くと解釈してください。

お客様から、「色漆の発色が悪いのですが」という質問をよく受けます。 理由は1つではありませんが、お話を伺っていると、出来るだけ漆室の温度湿度を上げて乾かしている方が多いようです。 漆は、早く乾くと色が濃く乾き、ゆっくり乾くと透けが良くなります。 そのため色漆はゆっくり乾かした方が発色が良くなります。漆は微妙な変化に反応する繊細な生き物なのです。 そのあたりが、「漆は難しい」といわれる所以の1つかもしれません。

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漆の保管方法、期限

漆は放置しておくと分離するということを覚えておいてください。 底の方に漆の乾きが早い部分が溜まりますので、使用する際は、底から良く撹拌してください。

一般的に、「冷暗所で生漆は6ヶ月、精製漆は1年。 上記以上放置すると、乾燥が大幅に落ちていることがあるので、新しい漆と混ぜて使用すること」となっています。

補足になりますが、生漆(瀬〆、生正味)は、「生もの」と思ってください。 夏場など暑い時期は、ビニール袋などに入れて、冷蔵庫で保管することをお勧めします。 生ものですから、暑くなってきますと、変質することがあります。 変質してきますと、色や香りが悪くなり、次第に乾きも悪くなっていきます。

以下のような質問も受けます。

Q,購入してから何年もの年月が経ってしまった漆があるのですが使えますか?
A,粘度が増し、ほとんどの場合乾かなくなっています。
チューブ入りでしたら、茶碗などに出して良く撹拌して、ガラス板などに塗って乾くか試してください。(「つけ」をとるといいます。)乾かない場合は、入梅時から夏場の漆が早く乾く時期に、新しい漆に添加する形で使われることをお勧めします。

Q,チューブが未開封なので長持ちしますか?
A,漆の場合、開封、未開封は同じと考えてください。未開封だから長く持つわけではありません。

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漆かぶれ

漆は、その人の体質によって「かぶれる人」「かぶれない人」がいます。 使用時に体調が悪い、発汗などによっても、かぶれやすくなります。 しかし、かぶれやすい人も、使用を続ける間にかぶれにくくなっていきます。

なるべく漆を直接肌に付けないようにし、もし付いてしまったら乾かぬうちに植物油を付けて拭き取って下さい。 もし付いてかぶれてしまったら、かきむしらず、温かいお湯に塩を入れて患部を浸けるとかゆみが治まります。 (昔から漆かぶれには、海水浴が良いといわれています)治る期間は個人差がありますが、必ず治りますし跡は残りません。